2016年3月7日月曜日

カミーノ(道)

アントニオ・マチャード(1875-1939)は、日本ではそれほど知られていませんが、「1898年世代」と呼ばれるスペインの一群の知識人に属する国民的な大詩人です。

19世紀、支配下にあった中南米の国々の独立運動があちこちで起こり、スペインは1898年には最後に残っていたキューバも、米西戦争の敗北で失いました。

スペインの海外支配は完全に終焉し、経済や社会も疲弊を極めることになります。

こうした自国の未曾有の危機に際して、スペインという国を根本的に見直し、再生への道を模索したのが「98年世代」とよばれるグループです。

彼らは過去の栄光ではなく、ドン・キホーテの冒険の舞台のような赤茶け、痩せた“カスティーリャ”の地にスペインの魂を探りました。

まさに1898年に詩人としての第一歩を踏み出したマチャードは、スペインの混乱の時代を生き、内戦が終わる1939年に亡命先のフランスで非業の死を遂げています。


  道をゆく人よ きみの足跡
  それが道だ ほかにありはしない
  道をゆく人よ 道などない
  歩いて 道はつくられる
  Caminante, son tus huellas
  el camino y nada más;
  caminante, no hay camino,
  se hace camino al andar.

多くのスペイン人が暗唱しているといわれる、通常「カミーノ(道)」と呼ばれているマチャードの短詩(コプラ)の冒頭の部分です。

高村光太郎の「道程」を思わせるこの詩には、人生行路だけでなく、スペインという国のたどってきた道のりをも、暗示しているように思われるのです。

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