2016年4月4日月曜日

ジャコバンの血

アルバレスとアナとの間にはマヌエル、アントニオを含めて5人の息子がいましたが、彼らは親戚のアグスティン・ドゥラン(1789~1862)==写真、wiki=が編んだ「ロマンセーロ(民謡集)」を、声に出して繰り返し読んで聞かせたといいます。

後に詳しく見ますが、ロマンセは8音節の韻文で書かれているスペインの民謡で、ロマンセを集めたものがロマンセーロ(民謡集)です。


16世紀に入ってから民謡を集大成しようとする気運が高まり、様々な民謡集が編纂され、出版になりました。中でも特異な位置を占めるのが、ルカス・ロドリゲスの『物語民謡集』でした。

このロマンセーロの特色は、単に作者不詳のロマンセを集めただけでなく、それをもとにしてロドリゲス自身が注釈に該当する詩を添えるなどして手を加えた民謡集になっているところにありました。

こうした作品などに注目しながら、ドゥランは「ロマンセーロ」をまとめあげたのです。

さて、このあたりで誕生後のアントニオ・マチャードのほうに話を戻しましょう。マチャードの代表詩集『カスティーリャの野(Campos de Castilla)』の冒頭の詩「肖像(Retrato)」は次のようなフレーズから始まっています。

僕の幼年時代はセビーリャの中庭の想い出
またレモンの熟れて明るい果樹園のそれだ
Mi infancia son recuerdos de un patio de sevilla
y un huerto claro donde madura el limonero;

マチャードの生涯は、陽光の降り注ぐ大きな館の庭園で、揺り椅子に腰を下ろした母の胸に眠り、終日そこで遊んでいる甘美な記憶とともにはじまります。母の大きな慈愛は、その豊かな感受性の源泉となったのでしょう。

そして、このアンダルシアの庭園の鮮やかな色彩とふくいくたる香りは、詩人の心に深く刻み込まれました。子守歌として聞いた噴水のつぶやきは、彼の脳裏に深く刻まれたらしく、後に繰り返しうたわれることになるのです。

この血管を流れているのはジャコバンの血
だが僕の詩は清らかな泉から湧きあがる
Hay en mis venas gotas de sangre jacobina,
pero mi verso brota de manantial sereno;

そして、マチャードの詩人としての素養は「中庭」の母の大きな愛に加え、こうした「館」に集うジャコバン(急進改革派)的な知識人たちとの刺激的な交わりの中で培われていったのです。

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