2016年5月24日火曜日

「アルバルゴンサレスの地」⑦

かつてはあたりで一番恵まれていたものの、いまでは狼が徘徊する惨めなアルバルゴンサレスの村。

詩人は、あるときは慎ましく善良に生きる彼らの姿を肯定的に見つめ、またあるときは、彼らの内に潜む醜い心に目をこらし、貧相な価値観に根ざす道徳性をあばき出します。

いずれにしてもマチャードは彼らの生の奥底に、ある種の悲しみを感じ取り、同じ人間として孤独な荒地に暮らす姿がいたたまれなく思われたのでしょう。

  野に働く人々には
  カインの血が多量に流れている
  Mucha sangre de Caín
  Tiene la gente labriega,

と作品の冒頭(「導入部分」のⅢ)で歌われます。


カインとその弟アベルは、旧約聖書の創世記(第4章)にあるアダムとイヴの子。カインは長じて農耕を営み、アベルは羊飼いになりました。

2人は供え物をしますが、主はアベルとその供え物は顧みたものの、カインのほうは顧みませんでした。カインはそれに憤って、アベルを野に誘い殺してしまいます=写真、wiki。

人を殺すという犯罪の始まりです。ロマンセを語るにあたり、カスティーリャの田舎で起こった悲劇の語り部はまず、カインの血をもつすべての人間に対して問いを投げかけているわけです。

物語が進むにつれて読者は、アルバルゴンサレスの村の出来事にスペインの骨格であるカスティーリャの姿を重ねて見ることを余儀なくされます。

「98年世代」の詩人は、アルバルゴンサレスの地にスペインを見ているのです。

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