2016年5月25日水曜日

「アルバルゴンサレスの地」⑧

父親の時代のアルバルゴンサレスの地は、かつての黄金期のスペインであり、目前にひろがる荒廃したアルバルゴンサレスの地は、すべてを失って行き先の見えない、いまの貧しいスペインなのです。

アルバルゴンサレスの地の荒廃の歴史は、すなわちスペインの荒廃の歴史に重なってきます。良きものを殺してしまった結末が、荒れ果てすさみきったスペインの現在なのです。

ロマンセ「アルバルゴンサレスの地」では、ゴツゴツとした岩山におおわれたカスティーリャの荒涼たる自然が克明に描き出されています。

それらがむしろ主体性を持っているかのように物語に割って入り、ときに醜さや脆さをさらけ出す人間なる存在の営みを浮き彫りにしているようにも思えます。


中でもこのロマンセで際立っているのが、川の流れをさかのぼってたどり着く源流の泉から、底の無い沼にいたるまで、「水」によって醸し出される比類のない映像的、聴覚的な効果でしょう。

試みに、このロマンセの自然描写のカギになると思われる単語がどれくらい使われているか調べてみると、次のようになりました。

カスティーリャの自然の基調をなすと考えられる「山(monte)」、「谷(valle)」、「松林(pinar)」はそれぞれ6回、「岩(roca)」や「樫(roble)」は3回ずつ。

一方、水にかかわる単語では「水(agua)」が13回、「沼(laguna)」10回、「泉(fuente)」9回、「ドゥエロ川(Duero)」6回、「川(río)」5回などとなっていました。

自然描写のなかでも特に「水」に関する記述を重視し、特別な役割をもたせていることがうかがえます。

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