2016年5月27日金曜日

「アルバルゴンサレスの地」⑩

青みがかった空にまたたく星。険しい岩山、闇に包まれた松林、深い谷底。そんな中から沸き立ってくる「水(agua)」の声がやがて人を暴き立てます。

「alba」「arriba」「alto azul ardía」などと、前半で語頭が「a」の単語を並べて頭韻的な響きを作り出しています。

「千回(mil veces)」のリフレインをはさんで、招きこむように「水(agua)」が四つ繰り返され、殺人の「証人」である泉は、目撃した犯罪について語っていきます。告発者の川は声高らかに罪をあばいていくのです。

それがやがて村人の耳に届き、川の水が音を立てて流れるように、犯罪を告げるコプラ(短詩)が人々の口から口へと伝えられていくことになります。

「泉から沼までの水による聴覚的効果は全てに勝っている」 のです。


ロマンセでは、殺人を犯した2人の心のうちを記述するのに長行を費やしている。彼らは自分たちが犯した恐ろしい行為を十分に承知して後悔します。

薄暗い森の中で2人は、罪を犯したあの日を思い出して震え出します。

ロマンセ「アルバルゴンサレスの地」で詩人は、自分のあり方を宇宙的な時間にまで広げたときにどのように位置づけられるかを、スペイン国民ひとりひとりに問いかけているようにも思えます。

そして、その答えは、後に生きる人々の問題として未来に開かれているのです。

世界と人間の生を問いながら、アルバルゴンサレスの地、すなわちカスティーリャ性の「黒沼」に埋没しているスペインの人びとに対して、再生への指針をほのめかした作品と言えるのかもしれません。

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