2016年9月22日木曜日

コプラと「道」②

民俗学者だった父親の影響もあって、子どものころからそうした歌に接していたアントニオ・マチャードにとって、「スペインの魂の誠実な記録」であるコプラは、ロマンセとともに「98年世代」としてのメッセージを人々に届ける格好の表現手段と考えていたのでしょう。

コプラなどの短詩は、カスティーリャ体験を経た中期から後期にかけて、より頻繁に作られるようになります。特に1924年に出版された『新詩集(Nuevas Canciones)』以降は、マチャードの詩の主流となったといってもよさそうです。


コプラ(Copla)は、もともとラテン語で「束縛」あるいは「結合」といった意味をもつ「copula」に由来します。3行あるいは4行で構成されるスペイン詩の中で最も小さな詩形式です。

18世紀にスペインで確立し、ラテンアメリカにも広まった。スペイン人に最もなじみ深い1行8音節、オチョシラボス(octosilabos)で作られるのがふつうです。

構成は、クアルテタ・デ・ロマンセ(cuarteta de romance)ともいわれる、8音節で偶数行が韻を踏む4行詩が多くなっています。つまり韻律や構成からすると、コプラはロマンセの一種、あるいは「ロマンセの継承者」と考えてもいい詩形なのです。

たとえて言えば、日本の近世に発展した文芸である俳諧連歌のうちから発句が自立し、やがて俳句として盛んに作られるようになったのと、どこか似たところがあるのかもしれません。

ロマンセと同じようにコプラは、民衆の歌と密接な関係を持っています。犯罪を訴え、歴史を語り、日常のできごとを描写します。愛を、嫉妬を、失望を語るのです。

昔から歌われてきた歌謡の一部をはしょったり、居酒屋で聞いたロマンセの中の一部から題材が取られたりもします。話し言葉であけっぴろげ、滑稽さ、とりわけ好色な効果を出すため、しばしば詩句に二重の意味を折り込むこともあります。

マチャードがこの詩形を好んだことについて、ヘスス・アリエタは「この庶民的な表現方法を用いているのは、la coplaとかel cantar popularにこそ詩的感情、詩的理念の本質的統合が、飾り気のない素朴な、最小限の手段で達成されると確信していたことによる」* としています。

* ヘスス・アリエタ「アントニオ・マチャード――アンダルシア生れの詩人におけるカスティーリャ的深奥――」上智大学外国語学部紀要第10号,1975, p.54

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