2017年8月1日火曜日

日夏耿之介「春娃と万象」「愛の王者」

 きょうも『転身の頌』から二つ詩を読みます。

   春娃と万象

棕櫚の葉は高く掌(てのひら)を放(ひら)き
白樺の幹を褄(つま)かかげて並居(なみゐ)たり
おほどかに月のめぐる
宙空(そら)は碧玉の頸飾にして
山山呼吸(いき)はげしく地心よりの輪舞に狂へり
青き光を生絹(すずし)に鍍金(めつき)して
一人(いちにん)の阿嬌は若くあゆめど
その陰影(かげ)をよそにして何かありや

   ◇

「娃」の音読みは「アイ、ワ、ア、エ」など。美しい、美女、少女などの意味があります。「おほどか」は、おおらか、おっとり。

「棕櫚」は、ヤシ科の常緑高木。高さは5メートル以上になり、幹は直立し、枝がなく麻のような毛で覆われます。

「棕櫚の葉」=写真、wiki=は頂上に群生し、手のひら状で大きく長い柄をもちます。帽子、敷物、うちわなどの材料にも使われます。

「頸飾」(けいしょく)は、くびかざりのこと。

「阿嬌」(あきょう)の「阿」は親しみを表す語、「嬌」は漢の武帝の后の幼名で、美しい女性を意味します。


   愛の王者――又は螢感の歌

心は大気にはびこりみち
愛は運命のごとく出没す
婉美流火(えんびりうくわ)よ
爾(おんみ)ら 悉(ことごと)く光沢(つや)ある紅玉の類(たぐひ)にして
わが愛のあしどり速くもすぎ適(ゆ)かば
泡沫(うたかた)のごとく砕け散らむ
愛の王者のあゆみは軽く迅かに
廓(ひら)けゆく世界に火花咲きかつ散るべし

   ◇

「婉美」は、しとやかで美しいこと。

「流火」は、7月の異名でもあるようです。



「廓」には、城の外囲い、くるわといった意のほかに、がらんとして広い、広げるという意味もあります。

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